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ロジカルに考え、リリカルに語れ。

時を重ねるということ/Landschaftspark

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工場を好きな人は多いと思っている。あの工業を感じさせるフォルムは人を狂わせる。
ドイツのデュイスブルグにあるランドシャフトパーク/Landschaftsparkは精錬所跡をそのまま公園にしたもので、廃墟となった施設に触れることができる。
気候の良い時は普通の公園として賑わっているらしいが、霧がたっており、観光客数人すれ違っただけで、後は子供がサバゲーをしていた。
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ドイツ国内で行われているエムシャ―パーク事業は、こうした工業遺産を積極的に活用し、歴史と記憶を引き継いでいる。
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日本で歴史というと、寺社や武家屋敷などが観光に活用されているが、もっと工業遺産を整備して残してもらえると個人的にはとても嬉しい。
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時を重ねて、何かを残していくということは、選択をしていくということだが、安易に直近の時代を葬る、所謂父殺しに走らずに、多様性を保っていて欲しいと思う。

Landschaftspark Duisburg-Nord - Startseite

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MODERN ARCHITECTURE Theme Park / MedienHafen

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ドイツからはデュッセルドルフからの直行便で帰ってきたのだが、帰国前にメディエンハーフェン/MedienHafenに立ち寄ってきた。

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メディエンハーフェンはその名の通りメディア系の企業が集まっているところで、フランク・ゲーリーの建築がランドマークの、普段はお洒落なスポットらしい。立ち寄ったのは休日だった為、働く人たちは皆無で寂しさすら感じられたが。休日はライン河沿いに市民が集まっているとの情報も見たが、冬で曇りだったためかそういった人達も疎ら。屋外で過ごすには日光が必要なんだろう。

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ゲーリーの建築の他にも現代建築が集まっていて、好きな人が行けばさながら現代建築のテーマパークのように見えるだろう。実際に建築を案内している看板なんかも用意されている。
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天気と時間帯のおかげで廃墟感すら漂っているが、それはそれで。日本だと現代建築家や有名事務所が手がけたオフィス建築が集まっているところは早々無いので不思議な光景だった。

メディエンハーフェンへはデュッセルドルフ中央駅からトラムで行ける。メディエンハーフェン駅がトラムの終着駅となっているが、その2つ手前のStadttor駅がゲーリーの建築の最寄り駅。自分は帰る時に気づいて歩きまわってしまった。飛行機の時間が迫っていて、駆け足になってしまったので今度はもうちょっとゆっくりと行きたい。

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純粋なる空間として/Kolumba, Art Museum of the Archdiocese of Cologne

 今現在の建築、建物と言うものは最早風雨を凌げれば良いものではなく、空調、多くの設備を内外問わず実装し、複雑な機械の塊とも言える。それを逆手にとり設備を意匠として成立させたものがポンピドゥーセンターであったりロイズ・オブ・ロンドンだっりするのだが、ピーター・ズントー設計の聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館/Kolumba, Art Museum of the Archdiocese of Cologne はその対極をゆくものだと感じた。

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 徹底的に設備は隠されており、私たちは集中して陰翳の中に佇む作品を見ることができる。普段私たちが触れる空間は複合的な意味を持っているが、コロンバ美術館においては、光を削り取って作ったような、只々純粋な空間が其処にあった。

 美術館と宗教建築の遺跡という特殊なプログラムであったが、だからこそディテールに拘り、プログラムに没頭できるような建築であった。

このような建築には早々出会えるものではなく、プリツカー賞は伊達ではないと思った。美術館でこれなのだから、最近、併設されるホテルのコンペが終わったばかりの、ズントー設計のスイスのスパ「テルメ・ヴァルス」に行ったら幸福過ぎて死ぬかもしれない。いつか行ってみたい。

コロンバ美術館はケルン中央駅から南に歩いて10分ほど。カーニバルの時期に行ったので、祭りのパレードで近寄れない時もあったが、街が羽目を外してる時期を避ければ普通に平和なところです。


20150214-0221 Germany - an album on Flickr

 

Sci-Fi Interfaces IxD Lessons from Sci-Fi

2014年7月に出版された本、『SF映画で学ぶインターフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン』(丸善出版/Nathan Shedroff、Chiristopher Noessel著/原題『Make It So』)は、そのタイトル通り、SF映画からインターフェイスデザインを学べる本です。

SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン

SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン

その内容が一部抜粋されており、なおかつ新しい作品についても更新されているWebサイトがあります。英語ですが。

Sci-fi interfaces | IxD Lessons from Sci-Fi

最近だと、日本の文化を好きなデザイナーの方が、サイコパス翠星のガルガンティアを取り上げています。

Introducing Aleatha Singleton | Sci-fi interfaces

サイコパスに関しては

This system shows that there are a lot of social ramifications and ethical questions that designers and society should consider when creating and utilizing technology. It can be terrifying if used improperly, but can make society a better place if used conscientiously and ethically.

と、述べており、拙訳ですが、
「新しい技術を創りあげ利用するとき、デザイナーと社会が考慮しなければならない多くの社会的結果と倫理的問題があることを、シビュラシステムは示している。それは、不適当に使われるならば恐ろしくありえるが、真面目に、そして、倫理的に使われるならば社会をより良くすることができる。」
といったところでしょうか。

ガルガンティアに関してはレドが地球の言語を学ぶ際のUIについて書いています。

While he is still learning the language, he uses a floating translation display with accompanying audio that helps him communicate with the people on the planet. It’s a great implementation since he can take the time to read body language and expressions instead of having to keep his head down, staring at a screen.

ガルガンティアではチェインバーが現地の言葉を収集、翻訳して文字をフロートディスプレイに映してくれるのですが、レドは発音を聞き、ボディランゲージを読み取った後に文字を読むことができるので素晴らしい実装例だと述べています。確かに学習プロセスとしてとても優れているので、”貴官がより多くの成果を獲得することで、存在意義を達成する”というチェインバーの目的に合っていると感じます。
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本書では日本のアニメはカウボーイビバップぐらいしか取り上げられていなかったので、これからWebサイトの方で増えていくと面白いですね。
また、この本を参考にして日本のアニメのUIを集めた本なんかも作ってみると面白そうです。

監訳者、安藤幸央氏の話



20年

この間、輪るピングドラムを見なおしていた時に、「かえるくん、東京を救う」を読み返したくなり、近所の本屋に買いに行った。20年経っても村上春樹の本は電子化されていない。

20年経った阪神大震災と同じく、村上春樹にはちょっとした因縁がある。春樹*1が屋上からレコードを投げた神戸の学校に通っていたからだ。そこの図書室で村上春樹を借りて読んでいた。出身校だからと言って、特別扱いされることもなく、彼の本は普通に書架に収まっていた。

かえるくんは想像力の中で戦った。20年経っても、戦い続けている人達がいるのだろう。

わからないことは多いけれど、時代は意味と理由に終わりを求め、考え続けることを許してくれない。迷いと思考は切断されて、日常に回収される。

それでも、安易にわかったふりをするより、ずっと考えていたい。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

*1:なぜ村上春樹は下の名前で呼びたくなるのか

2014年の本

新海誠展に行って買ってきた本。映像版よりも登場人物が増えて、映像では語らなかった人物の内面が書かれて群像劇となり、映像版の続きも書かれている。
新海誠言の葉の庭について企画書の中でこう語っている。

…しかし「よって立つ場所を持たない」「歴史を持たない」ことは、この国で生きる現在の我々にとって、最初から設定されているパラメーター、所与の条件である。僕たちは不安定な時代に、不安定な気分で、文字通り揺れる足元の上で不安定に生きている。それでもなお日々美しいものを見つけるし、描くべき心の交流もある。だからこそ、拠り所のなさも孤独も受け入れた上で、それを肯定的に描く必要があるのだと思っている。
 新海誠“「言の葉の庭」──この作品について思うこと”(2012/09/22)より抜粋

不安定さを文字通り登場人物の誰しもが持っていることが書かれているのが小説版だった。
揺れながらも時間を積み重ね、誰かの指が少し触れ、そして離れていく。そういう繊細さが感じられる物語だった。

  • My Humanity

My Humanity

My Humanity

テクノロジーの可能性を書き切るったSFは良いもの。良きも悪くも異常性も普遍性も、全てを。短篇集である本書には、BEATLESSあなたのための物語と設定を同じくした物語が収められているが、特に「あなたのための物語」に出てきた擬似神経制御言語ITPを犯罪者矯正に利用する「allo,toi,toi」は非常に印象に残り、テクノロジーを通した、人間や幸せ、倫理について考えこんでしまう。

建築家、藤村龍至の単著。日本の建築と都市を俯瞰し、そこから繋がる現代に対して、建築と都市をどうやって作っていくがが書かれている。
実践されたプロジェクトを通し、得られたデザインプロセスには説得力が有り、知っておく価値はある。
近代から現代までの、日本における建築を知るのにもおすすめ。

レム・コールハースは何を変えたのか

レム・コールハースは何を変えたのか

今現存する建築家において、世界で最も重要な人物を挙げろ、と言われれば、建築をかじった人間ならほぼ全員がレム・コールハースを挙げるのではないだろうか。
レム・コールハースを論じた本書では、多様な視点が存在し、そこから彼の影響が推し量れる。槻橋修氏の論考、「観測者のランドスケープ」はシュールレアリズムの視点も挟まり、語れる視点の多さと影響に圧倒される。

  • 弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

社会はあまりにも細かく分かれすぎている、と最近思う。細かさ故に、そこにコミットし生きていくには、あまりに不安定だと。
しかし無理にコミットせず、観光客として社会を旅する姿勢を本書は教えてくれる。

仮面ライダーの軸

 仮面ライダー鎧武の話は佳境に入り、仮面ライダードライブの始まりが近づいてきました。ドライブは車に乗るライダーということで話題になっています。車に乗るライダーは初でなはなく、仮面ライダーBLACK RXがライドロンに乗っているのですが、バイクに乗らないで車だけに乗るというのは確かに初です。ということで宣伝文句にはちゃんと「バイクに乗らず」という枕詞が付くようになっています。
ちなみに仮面ライダーBLACK RX石ノ森章太郎先生が最後に関わった仮面ライダーであり、武器による必殺技や多段変身など平成仮面ライダーに繋がる要素が沢山あるのですが、多くを語ると長くなるので興味のある方はぜひ見てください。


 さて、仮面ライダーのデザインや設定について、インターネットで話題になるようになったのは平成ライダー第8作、仮面ライダー電王の辺りだと私は記憶しています。その桃を割ったようなマスクデザインと電車に乗るライダー、というのが大きく話題になりました。

仮面ライダー電王 VOL.1 [DVD]


 その後、キバ、ディケイド、Wとそれなりに話題になり、その度にこれは仮面ライダーではない、石ノ森先生への冒涜だといった意見も散見されます。しかし、製作陣も適当に作っている訳ではありません。仮面ライダーとは何かを真剣に考え、平成初期の頃とは変わってしまった社会状況やマーケティング戦略による制約を受けながら、常に新しい仮面ライダーを作っています。その姿勢は作品を見ているとひしひし感じます。

ユリイカ平成仮面ライダー特集号において、白倉伸一郎氏が仮面ライダーを作るに当って外せない軸として、「同族争い」「親殺し」「自己否定」の三つを挙げています。これは仮面ライダー1号が持っていた軸です。ショッカーの改造人間である仮面ライダーが同じ改造人間と戦う。自らを生み出したショッカーを倒す。そしてショッカーを全滅させるならば、ショッカーの改造人間である自分の存在も否定しなければならない。三つの軸に合わせて平成各作品を見てみると、描き方は違えどその軸が表現されています。

 私は平成仮面ライダーの中では555が好きなので、555の中の「軸」についてネタバレにならない範囲で挙げてみます。
555の軸は、オルフェノクという人間の進化態と戦う「同族争い」があり、ベルトを作ったスマートブレインを倒すという「親殺し」があり、ベルトがスマートブレイン製であるが故の「自己否定」があります。ネタバレなしだと温い軸になっていますが、話が展開するに連れ、三つの軸は大きく変化し、物語にカタルシスを生むものとなります。ぜひとも作品を見て確認していただきたいです。
その他の作品の軸についても、各作品を視聴しながら発見していただきたいです。huluで全話配信されるそうですし。

Huluで「仮面ライダー」22シリーズ、計1060話を配信 「BLACK」「555」など14シリーズが初登場 - ねとらぼ


 仮面ライダーWからの平成2期では、ディケイドでのドライバーの爆発的な売上を受けて、仮面ライダーの根幹、ベルトの売り方がかなり重視されるようになりました。そこで、「同族争い」と「親殺し」を満たすように、敵と同じ力で変身するという設定が平成2期から顕著になります。Wではメモリ、オーズではメダル、フォーゼではスイッチといった具合です。

商業的制約と物語との関連の話は、ロースおじさんの話が素晴らしいです。

とんかつQ&A「仮面ライダー鎧武」 | ホームページ作成サービス「グーペ」のキャラクターブログ「とんかつ教室」

大人も騙せないような話が、子供に夢を見せることはできません。そのぐらいクオリティは高いと私は思っています。鎧武の終盤も、怒涛の展開*1と若手の役者達の成長により*2凄く面白くなっています。

 ドライブに関しても、車に乗る!バイクじゃない!体にタイヤ!と設定やデザインが話題となっています。先に挙げたように石ノ森先生が云々という意見もあります。しかし、仮面ライダーというのは外見や初期設定だけで、それが仮面ライダーであるかどうかを判断できるものではないと私は思います。シフトカーはもしかして敵も使うんじゃないかとか、刑事ということは正義のあり方への踏み込み方も色々ありそうだとか、今回の三つの軸はどう表現されるんだろうとか、今から心踊らせて考えています。
 もちろん、話が進んで全容が見えてきても、デザインやその物語について好き嫌いや異論が出るのは仕方がないことだと思いますが。

 長々と書きましたが、仮面ライダー鎧武の結末、そして仮面ライダードライブを非常に楽しみにしています。

仮面ライダー555(ファイズ) Blu-ray BOX1

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*1:鎧武では平成2期のフォーマットだった2話完結構成を止めたので話が自由になっている

*2:特にミッチ役の高杉真宙