YI

ロジカルに考え、リリカルに語れ。

時代を超える風景

安藤忠雄展は盛況だった。盛況過ぎて住宅エリアは展示物がほとんど見れなかった。

実作を見たものも多かったので、音声ガイドを聞きながら回ったが、安藤忠雄という大阪のおっちゃんは施主と仲良くなる能力が高すぎるとわかった。設計した住宅を施主から買い取って事務所にしたり、施主との思い出をスチボで作ったパネルにする。他にも安藤忠雄の建築を成立させる要因はあるが、「施主と仲良くなる」も重要な要因だと感じた。

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増築申請までして建てられた光の教会の1/1スケールの展示にも人は溢れ、皆が写真を撮っていた。10年ほど前に光の教会を見学させてもらった時とは全く違う風景だ。安藤忠雄の建築がインスタグラムの文脈に乗るとは全く持って考えなかった。
https://www.instagram.com/p/Bb3fJnClTPh/

光の教会が再現されるとわかった時、RCじゃない!という意見が溢れた。それはリアルなのか?何がリアルでリアルじゃないか。果たして建築のリアルとは?という問いかけについては豊田さんが答えている。
www.archifuture-web.jp


リアル、フェイクという軸ではなく、あり得たかもしれない並行世界。見たことがないのに見たことある風景。一度本物を見ていても、RCから鉄骨造PCパネルになっていても、今此処にあるものが本物だと思わせる。観察したものの経験をハッキングする。ポストトゥルースを肯定しつつ否定する。建築という場所にも時間にも縛られるメディアで、ここまでの力を持った安藤忠雄の作家性に驚愕した。

見たこともない風景を見たことがあると思わせ、今此処に立つ場所を肯定する。それは新海誠の描く風景と似ていると思う。
奇しくも新海誠展は、安藤忠雄展の隣で開催されている。
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