YI

ロジカルに考え、リリカルに語れ。

アジール・フロッタン 浮かぶ避難所

8月22日まで新日石ビル1階のASJ TOKYO CELLにおいてアジールフロッタンの展示が行われている。
www.asileflottant.net

アジールフロッタンはコルビュジェがコンクリート製の船を「浮かぶ避難所」として設計し直し、増築したもので、老朽化が進んだ現在は再生計画が進められている。計画は遠藤秀平氏の設計で進められており、8月19日にはクラウドファウンディングも始めるようだ。

とても丁寧な展示で、解説も素晴らしく無料で貰える冊子だけでも行く価値はある。

ブループリントをイメージした冊子表紙。

短冊型の解説用紙も良いクオリティ。


若干無理矢理ではあるが、サヴォア邸の前に近代建築の五原則が船上で構築されていたというのが解り、とても興味深い展示だった。

そもそも船と建築というのは意外と相性がよく、豪華客船などは集合住宅とも似ていたりする。
コルビュジェのユニテ・ダビタシオンなどは客船に例えられている。

MVRDVの集合住宅サイロ=ダムなども水上に浮かぶ姿は船を連想させる。
Untitled

日本においては東新宿の軍艦マンションや、集合住宅が島を埋め尽くした軍艦島などがある。

また、ドローイングのみだが、ハンス・ホラインは空母をそのまま地表に置き、「航空母艦都市」なるものを発表している。
http://www.hollein.com/var/ezwebin_site/storage/images/kunst/flugzeugtraeger-in-der-landschaft/1967_flugzeugtraeger_in_der_landschaft.jpg/6496-1-ger-DE/1967_FLUGZEUGTRAeGER_IN_DER_LANDSCHAFT.jpg_projectimage.jpg

www.hollein.com

船=建築・都市のイメージは様々な作品に及び、マクロスシリーズやガールズアンドパンツァーの学園艦などに見ることができる。
f:id:rotten_apple:20170817195323j:plain

ともあれ、建築と船の関係をしめした原初的な作品であるアジールフロッタンに再び触れる時を楽しみにしたい。

マルセイユのユニテ・ダビタシオン (ちくま学芸文庫)

マルセイユのユニテ・ダビタシオン (ちくま学芸文庫)

HANS HOLLEIN 作品集―a+u Extra Edition(エー・アンド・ユー臨時増刊)1985.2

HANS HOLLEIN 作品集―a+u Extra Edition(エー・アンド・ユー臨時増刊)1985.2

MVRDV: Works and Projects 1991-2006

MVRDV: Works and Projects 1991-2006

メッセージについて

 以下の文章はメッセージおよびあなたの人生の物語について過分な情報が含まれています。

 最初に映画を見た時は、子供も愛おしくなるほど可愛いし、よく出来ているなと思った。しかし原作を読み返すと、何とも言えない違和感が映画に対して生まれてしまった。
 思考は言語によって規定されるという言葉を出したのは良かったけれど、それならば何故言語自体がメッセージであり、それにより思考が変わったという結末を変えたのか。ヘプタポッドが何も残さなかったというのが重要であり、世界が結束してギフトを解読する未来は要らなかった。
 映画というメディアからして見せ方は確かに色々あるとは思うしスケールを上げなければならないというのも理解するが、最後は思考する方法が変わったというのを主にしなければ、原作のストイックさは伝わらないのではないか。思考の変化が未来視のような特殊能力っぽい描写になってるのも悪手だったなと思う。ただの思考の変化なのだから。



そうなんだよね。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

WHAT YOU GOT in LOST DECADE

2007-2017

失われた10年で得たものは。



瞬きの間に


建設現場は刻々と姿を変えるもので、その時にしか見られない。
何もないというのが在る、という状況は今しか見られない。

突き詰めると大体の風景に同じ時はない。
ただ、建設現場はその変化に劇的な影響を与えているはず。そうブルーシートを見て思った。

hachim.hateblo.jp

この景色は、ほんの僅かの間だけ。

虐殺器官について

映画、虐殺器官を見てきた。

ハーモニーを見る際に原作を読み返さなかった、という反省を踏まえて今回は原作を読んでから鑑賞に臨んだ。
yutaiguchi.hatenablog.com

率直に言うと、予想していたよりも良かった。

小説は小説の良さがあるとして、映像だけでしか表現できないことをやっていたのは良いと思う。
会話シーンでの光の演出などは、気づいてしまうと安易かもしれないが、映像でしか活きないものだと思う。
また、メカデザインやオルタナデザインは素直にカッコ良いと思えた。フライングシーウィードはかっこよい海苔になってたが、山根公利さんの仕事だろうか?オルタナ周りのデザインは安定の佐山善則さん。

表現の難しさからか、仕掛けやセリフ、個人の機微は削ぎ落とされており、特にクラヴィスの原点というものがゼロになっていた。
その結果、クラヴィスの私的な側面はルツィアに一任され、映画がエンタメ側に振れている形となった。

とは言え、それらが悪手だったとは自分は思わなかった。
この時代に即した、率直な断絶の果てを見ることができたと思う。

伊藤計劃の作品が未来を予想していたとは言わないが、現実への投影に耐えうる強度を持っているのだなと、再確認できる映画だった。

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

Brutal London

以前から気になっていた本で、ロンドンのブルータリスト建築を集めた本を買った。タイトルはBrutal London。

Brutal London: Construct Your Own Concrete Capital, Includes Press-Out-and-Build Models of Alexandra Road Estate, Alton Estate, Aylesbury Estate, Balfron Tower, Barb

Brutal London: Construct Your Own Concrete Capital, Includes Press-Out-and-Build Models of Alexandra Road Estate, Alton Estate, Aylesbury Estate, Balfron Tower, Barb

序文がノーマン・フォスターとかそういう点も気になるところではあるが、なによりブルータル建築のペーパークラフトが付いてくるのが見どころ。

手で切れる。

折って

組み立てるとブルータル建築が現れる。



このアレクサンドラ・ロード・エステート(Alexandra Road Estate)は映画「キングスマン」でエグジーが住んでいた集合住宅。ブルータリスト建築は同じ本に載ってるバルフロンタワー(BalfronTower)*1コルビュジェのユニテ・ダビタシオン(Unité d'Habitation)など、集合住宅と相性がいい気がする。


落書きも再現。


接着面が浮いてるのは見逃して欲しい。糊が家に無かったので。
赤いのは1/144のフル・フロンタル大佐で、それよりは小さいようだ。全部で9個の建築がペーパークラフトになっているが、スケールは書いていないしバラバラだ。

収録作品

  • Alexandra Road Estate
  • Alton Estate
  • Aylesbury Estate
  • Balfron Tower
  • Barbican Estate
  • Ledbury Estate
  • National Theatre
  • Robin Hood Gardens
  • Space House

ブルータル建築はル・コルビュジエ以降の、béton brut(ベトン・ブリュット)*2で作られた冷酷な建築だ。それを紙で作るとエッジなんかはよくわからなくなるが、テクスチャのクオリティはいいので雰囲気は掴める。意味のあるコンクリートは冷酷で強い。

本として惜しいのは図面が載ってないのと、写真が少ない点だ。建築の本としては致命的だが付録が主体みたいなものなので。

リンク先の記事でプレゼントもやっているようです。
www.dezeen.com

*1:Trellick Towerとも呼ばれるらしい

*2:フランス語で生コン

傍らのプロメテウス

<ゾーン>と呼ばれ、悲劇の地として世界に記憶されたチェルノブイリは、しかし秋ともなれば、そこらじゅうに生い茂って廃屋を呑む草木が紅葉し、鮮やかに色づく。晴れた日には、空が抜けるほど青く拡がる。太陽が燦々と降り注ぎ、木々にくっついたヤドリギ越しに木漏れ日が地上に落ちている。
AIと人類は共存できるか?: 人工知能SFアンソロジー 収録 吉上亮「塋域の偽聖者」より

 「塋域の偽聖者」で描かれるチェルノブイリ、プリピャチの風景は鮮明過ぎるほど思い浮かべることができる。それはチェルノブイリダークツーリズムガイドといった書籍や、CoD4 MWS.T.A.L.K.E.Rといったゲームで見た風景だからだ。
 特にチェルノブイリダークツーリズムで報告されている、「赤い森」、「文化宮殿<エネルギー作業員>」、完成間近の「新石棺」*1などの情報は物語を読む上で大きな場所性を与えてくれた。

 「塋域の偽聖者」は信仰の物語である。「神の火=原子力」を盗んだ人類が、贖罪のための新たな聖域を始めるまでの物語だ。本来なら日常から遠い「神の火」の物語を、触れてきた情報が近傍のものに感じさせてくれる。

 Nukarama Punk(ニュークラマ・パンク)と見なされるジャンルのゲームも流通している現代において、*2「神の火」にまつわる情報はおそらく増えている。日本においては、福島の影響は切り離せない。
 本来、インフラは人に近いものであるが、「神の火」の情報がここまで日常に迫ることを誰が予想できただろうか。すぐ隣にプロメテウスがいることを、見ないようにしてきただけかもしれないが。

 「塋域の偽聖者」はシンギュラリティが起きた以降、高次人工知能という人が自ら作った神をどう信仰するかが書かれている。10万年後に対する準備の、*3その顛末にも触れられている。その端緒、遠くない未来の答え合わせをいつかしてみたい。

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1

4号炉・石棺