YI

ロジカルに考え、リリカルに語れ。

2014年の本

新海誠展に行って買ってきた本。映像版よりも登場人物が増えて、映像では語らなかった人物の内面が書かれて群像劇となり、映像版の続きも書かれている。
新海誠言の葉の庭について企画書の中でこう語っている。

…しかし「よって立つ場所を持たない」「歴史を持たない」ことは、この国で生きる現在の我々にとって、最初から設定されているパラメーター、所与の条件である。僕たちは不安定な時代に、不安定な気分で、文字通り揺れる足元の上で不安定に生きている。それでもなお日々美しいものを見つけるし、描くべき心の交流もある。だからこそ、拠り所のなさも孤独も受け入れた上で、それを肯定的に描く必要があるのだと思っている。
 新海誠“「言の葉の庭」──この作品について思うこと”(2012/09/22)より抜粋

不安定さを文字通り登場人物の誰しもが持っていることが書かれているのが小説版だった。
揺れながらも時間を積み重ね、誰かの指が少し触れ、そして離れていく。そういう繊細さが感じられる物語だった。

  • My Humanity

My Humanity

My Humanity

テクノロジーの可能性を書き切るったSFは良いもの。良きも悪くも異常性も普遍性も、全てを。短篇集である本書には、BEATLESSあなたのための物語と設定を同じくした物語が収められているが、特に「あなたのための物語」に出てきた擬似神経制御言語ITPを犯罪者矯正に利用する「allo,toi,toi」は非常に印象に残り、テクノロジーを通した、人間や幸せ、倫理について考えこんでしまう。

建築家、藤村龍至の単著。日本の建築と都市を俯瞰し、そこから繋がる現代に対して、建築と都市をどうやって作っていくがが書かれている。
実践されたプロジェクトを通し、得られたデザインプロセスには説得力が有り、知っておく価値はある。
近代から現代までの、日本における建築を知るのにもおすすめ。

レム・コールハースは何を変えたのか

レム・コールハースは何を変えたのか

今現存する建築家において、世界で最も重要な人物を挙げろ、と言われれば、建築をかじった人間ならほぼ全員がレム・コールハースを挙げるのではないだろうか。
レム・コールハースを論じた本書では、多様な視点が存在し、そこから彼の影響が推し量れる。槻橋修氏の論考、「観測者のランドスケープ」はシュールレアリズムの視点も挟まり、語れる視点の多さと影響に圧倒される。

  • 弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

弱いつながり 検索ワードを探す旅

社会はあまりにも細かく分かれすぎている、と最近思う。細かさ故に、そこにコミットし生きていくには、あまりに不安定だと。
しかし無理にコミットせず、観光客として社会を旅する姿勢を本書は教えてくれる。