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ロジカルに考え、リリカルに語れ。

天気の子で描かれた座標について

新海誠作品はずっと座標を描いてきた。
時間と場所と人で決まる座標、そして座標二点間の距離が外部のエネルギーでどう変わっていくかを描いているのが新海誠作品だと思う。
Z会のCMですら距離の変容が描かれている。

新海誠監督『クロスロード』受験生応援ストーリー120秒Ver.|Z会


これまでの作品で、座標を動かすエネルギーは色々あった。
子供から大人への成長だったり、雨だったり、夢だったり、彗星であったり、天気だったり。

この構成はずっと変わらないが、結末がどうなるかはわからない。
取り返しがつかなくなるほど離れてしまったり、物理的距離と心理的距離に差があったり、時を超えて近づいたり。
最終的な距離を確認するために新海誠作品を見続けているし、これからも見続けると思う。



以後天気の子の核心があります。



天気の子では、これまでになく座標自体が大きな力を持っていた。
東京という場所で、帆高と陽菜が出会ってしまったが故の世界の変容。

予告で散々言われてきた「世界を変えてしまった」と言うのが比喩でもなんでも無くて、東京を水没させる。
ボーイミーツガールが世界に接続する展開。
もはや懐かしささえ感じる物語だ。

でも世界は普通じゃなくて狂ってるから、こんな天気の変化なんて星のスケールで考えると何でもないから、二人の為だけを考えても良いんだよ、という優しく狂った力を感じた。
ここまでの強さは新海誠作品には今まで現れなかったと思う。
監督のインタビューでも強くあろうという姿勢が伺えるし、最後の帆高の「叫び」など、描きたいものを描ききったんだなというのが、作品を見たあとだとすごくわかる。

news.yahoo.co.jp


また、これまでになく終始「東京」を描いていて、監督はすでに東京を自分のものにしているとも感じた。

別作品になるが、漫画スキップとローファー(1) (アフタヌーンコミックス)では人の記憶は場所の記憶であり、だからこの東京を好きになる、と語られている。
新海誠作品もずっと人と場所で座標を定義し、物語を作ってきた。
今回は東京に別レイヤーを重ねて、他でもない東京でしか語り得ない物語を作り上げていると思う。

JR東日本かLUMINEか森ビルは、監督にビル一個ぐらい任せてみるといいんじゃないでしょうか。
東京に新海誠の独自座標が現れると、また世界が変わりそう。
力を持った座標というのがこれから必要だと思う。

ここからは雑感だけども、瀧と三葉をわざわざ出してきたり、相変わらず監督は見てきた人に優しい。
花澤香菜佐倉綾音とかね。凪くんは今までの新海誠作品にはいなかったキャラクターで良かったですね。


インタビューにも出ていた、言の葉の庭の小説版も素晴らしかったです。天気の子はこの小説の描写が結実している。

yutaiguchi.hatenablog.com