屍者の帝国について
劇場版屍者の帝国について。
序盤なんかは面白いは面白いのだけれど、どうにも二次創作感が拭えない。一般向けにしようとする努力は認めるが、中途半端に終わっていた。原作を読み直さずにうろ覚えで見てしまったため、後半は混乱しながら見ていた。
良かった点としては
屍者の帝国、ざーさんのウィスパーボイスが良かった
— イグチユウタ (@Yuta_Iguchi) 2015, 10月 2
花澤香菜さん含め、声優さんの演技はとても良かったです。
フライデーの設定改変は物語の導入部では良い役割を果たしていたが、最後は足枷となっていた。言語が記録となり、記録が記憶となり、記憶が魂となる。フライデーとワトソンの関係が希薄であるからこそ旅路が意味を持ち、魂のありかが明確となる。
フライデーが生前の友人ということで、ワトソンがかつてあった魂を追い求めるような構図になってしまったことで、言語から魂は成り立つという面白さが薄くなってしまった事は否めない。
ワトソンとフライデー、円城塔と伊藤計劃、この関係の二重性については
屍者たちの帝国の後記でも大森望が記している。
この二人の関係性は、長編版『屍者の帝国』のフライデーとワトソンの関係におそらく(微妙なかたちで)反映しているし、劇場アニメ版では、生前のフライデーがワトソンの盟友だったという設定変更により、正面から両者の友情をテーマに据え、それが伊藤計劃と円城塔の関係に重なって見えるという二重構造になっている Read more at location 4407
このようにフライデーの設定改変は、円城塔と伊藤計劃の関係を楽しめるし、物語の間口を広く取れるという事で、劇場版というメディアには合っているとは思うが、やはり魂のありかという要素を楽しめるのは原作だろう。
個人的に屍者の帝国で凄く好きなアイデアはフライデーが女王陛下の所有物であるということ。
それは伊藤計劃のOn Her Majesty's Secret PropertyとFrom the Nothing, With Loveに繋がるもので、フライデーのナンバーが007というだけで痺れる。
結局言いたいことは伊藤計劃のアイデアをここまで繋げてくる円城塔凄い、というところに収束する。
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前述の屍者たちの帝国はかなり面白かった。
屍者の帝国とロシア宇宙主義、ハーモニーとイスラム神秘主義など、作品と思想の繋がりが見える物語があったのが面白かった。
書き下ろし日本SFコレクション NOVA+:屍者たちの帝国 (河出文庫)
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ともかく、虐殺器官はどうなるんでしょうか。
参考にした感想。d.hatena.ne.jp