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ロジカルに考え、リリカルに語れ。

仮面ライダーの軸

 仮面ライダー鎧武の話は佳境に入り、仮面ライダードライブの始まりが近づいてきました。ドライブは車に乗るライダーということで話題になっています。車に乗るライダーは初でなはなく、仮面ライダーBLACK RXがライドロンに乗っているのですが、バイクに乗らないで車だけに乗るというのは確かに初です。ということで宣伝文句にはちゃんと「バイクに乗らず」という枕詞が付くようになっています。
ちなみに仮面ライダーBLACK RX石ノ森章太郎先生が最後に関わった仮面ライダーであり、武器による必殺技や多段変身など平成仮面ライダーに繋がる要素が沢山あるのですが、多くを語ると長くなるので興味のある方はぜひ見てください。


 さて、仮面ライダーのデザインや設定について、インターネットで話題になるようになったのは平成ライダー第8作、仮面ライダー電王の辺りだと私は記憶しています。その桃を割ったようなマスクデザインと電車に乗るライダー、というのが大きく話題になりました。

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 その後、キバ、ディケイド、Wとそれなりに話題になり、その度にこれは仮面ライダーではない、石ノ森先生への冒涜だといった意見も散見されます。しかし、製作陣も適当に作っている訳ではありません。仮面ライダーとは何かを真剣に考え、平成初期の頃とは変わってしまった社会状況やマーケティング戦略による制約を受けながら、常に新しい仮面ライダーを作っています。その姿勢は作品を見ているとひしひし感じます。

ユリイカ平成仮面ライダー特集号において、白倉伸一郎氏が仮面ライダーを作るに当って外せない軸として、「同族争い」「親殺し」「自己否定」の三つを挙げています。これは仮面ライダー1号が持っていた軸です。ショッカーの改造人間である仮面ライダーが同じ改造人間と戦う。自らを生み出したショッカーを倒す。そしてショッカーを全滅させるならば、ショッカーの改造人間である自分の存在も否定しなければならない。三つの軸に合わせて平成各作品を見てみると、描き方は違えどその軸が表現されています。

 私は平成仮面ライダーの中では555が好きなので、555の中の「軸」についてネタバレにならない範囲で挙げてみます。
555の軸は、オルフェノクという人間の進化態と戦う「同族争い」があり、ベルトを作ったスマートブレインを倒すという「親殺し」があり、ベルトがスマートブレイン製であるが故の「自己否定」があります。ネタバレなしだと温い軸になっていますが、話が展開するに連れ、三つの軸は大きく変化し、物語にカタルシスを生むものとなります。ぜひとも作品を見て確認していただきたいです。
その他の作品の軸についても、各作品を視聴しながら発見していただきたいです。huluで全話配信されるそうですし。

Huluで「仮面ライダー」22シリーズ、計1060話を配信 「BLACK」「555」など14シリーズが初登場 - ねとらぼ


 仮面ライダーWからの平成2期では、ディケイドでのドライバーの爆発的な売上を受けて、仮面ライダーの根幹、ベルトの売り方がかなり重視されるようになりました。そこで、「同族争い」と「親殺し」を満たすように、敵と同じ力で変身するという設定が平成2期から顕著になります。Wではメモリ、オーズではメダル、フォーゼではスイッチといった具合です。

商業的制約と物語との関連の話は、ロースおじさんの話が素晴らしいです。

とんかつQ&A「仮面ライダー鎧武」 | ホームページ作成サービス「グーペ」のキャラクターブログ「とんかつ教室」

大人も騙せないような話が、子供に夢を見せることはできません。そのぐらいクオリティは高いと私は思っています。鎧武の終盤も、怒涛の展開*1と若手の役者達の成長により*2凄く面白くなっています。

 ドライブに関しても、車に乗る!バイクじゃない!体にタイヤ!と設定やデザインが話題となっています。先に挙げたように石ノ森先生が云々という意見もあります。しかし、仮面ライダーというのは外見や初期設定だけで、それが仮面ライダーであるかどうかを判断できるものではないと私は思います。シフトカーはもしかして敵も使うんじゃないかとか、刑事ということは正義のあり方への踏み込み方も色々ありそうだとか、今回の三つの軸はどう表現されるんだろうとか、今から心踊らせて考えています。
 もちろん、話が進んで全容が見えてきても、デザインやその物語について好き嫌いや異論が出るのは仕方がないことだと思いますが。

 長々と書きましたが、仮面ライダー鎧武の結末、そして仮面ライダードライブを非常に楽しみにしています。

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*1:鎧武では平成2期のフォーマットだった2話完結構成を止めたので話が自由になっている

*2:特にミッチ役の高杉真宙