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ロジカルに考え、リリカルに語れ。

SFからSFへ

サイエンスフィクションからソーシャルファブリケーションへ。

田中浩也先生の本、SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)を読み終わりました。特に興味深かった事柄について。

・SF的想像力について
3Dプリンタ3Dプリンタを作る、自己増殖のプロジェクトが過分に表現されているのは、南極点のピアピア動画でしょう。田中先生も本の中で触れており、作者の野尻さんはDMM.MAKEでも連載を持っています。
DMM.make - ベアフット妄想拡張講座 0話「ストーリー指向のMaking(前篇)」
ピアピア動画の中では、工場が自動的に整備され、突然変異の蜘蛛が軌道エレベーターを作り、果ては宇宙からの知性体が自己増殖します。これら要素が一つの物語の終着に辿り着く流れは非常に心躍りました。ファブリケーションの意志は色々な作品に息づいていて、「SFを実現する」の中で取り上げられている作品はスタートレックキテレツ大百科でした。私が思い出したのはBEATLESSに出てくるhIEのマリアージュが使用するデバイス、GOLD WEAVERです。八卦とアンティークミシンをモチーフにデザインされたこのデバイスは、設計図さえあれば何でも作る万能工場として機能すると表現されています。織物を編んでいくような製作過程とその万能感からは3Dプリンタの可能性の一つが見られます。
http://beatless.jp/gallery/pic/#g4
http://beatless.jp/common/img/gallery/main/bt_pic_4.jpg

これら物語をフィクションで終わらせるのではなく、現実に顕現させることが次のSF、ソーシャルファブリケーションだと感じました。

・場所、建築、都市について
 土着性が文化が立ち上がり、道具に影響を与えてきたということも興味深い事柄です。砂漠では太陽と砂を利用した3Dプリンタが実験されているのも面白い話でした。
 建築と3Dプリンタは相性が良く、模型作成の場で活用されています。建築設計事務所のBIGではスタディ段階から積極的に3Dプリンタが利用され、大きな模型を作るために広いオフィスへ引っ越しています。
個の強みを最大限に活かし組織の“らしさ”を磨く [BIG] | ISSUES | WORKSIGHT
また、建材レベルの部品を生成する研究もされているようです。
 都市の話では、スマートシティズンへの取り組みが興味深い話でした。都市の情報を可視化し、環境を最適化する。その可視化する手段は住民が自分で作る。市民そのものをスマートシティズンに成長させるプロセスです。都市に対して使用者してではなく参加者となって能動的に参加していくこと、そのプロセス自体に価値を生もうとしているとのことです。
 その土地にあったデバイスを使用し、人々が能動的に建築を建て、創造力と共に都市が生成され最適化されていくーーソーシャルファブリケーションな未来都市はそんな形でしょうか。

 他にも沢山の話が書かれていて、そのどの要素も未来を考えるに十分な材料となっています。そしてその未来が自分たちの手で創れそうな手触りを持った本でした。是非とも多くの人に読んでもらいたいです。

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

南極点のピアピア動画

南極点のピアピア動画

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