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ロジカルに考え、リリカルに語れ。

経験の都市

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 2014年1月30日にゲンロンカフェで行われた大山顕×東浩紀「ショッピングモールから考える」@hazuma @sohsai | Peatixに行ってきました。
イベントの大山さんと東さんの話はざっくりと言ってしまうと、ショッピングモールが持続性を持って新しい都市になり得るという話でした。私が未来都市研究会で書いた、「未来都市の変遷/群島化する都市」というテキストは架空の物語の都市がそうであるように、場所性を汲み、独自の経験ができる都市の出現を予測したものです。「ショッピングモールから考える」で行われた話はその考えを補強・発展するものであったと思います。様々な面白い話題が飛び出しましたが、全てを網羅するのは大変ですので、整理しつつ私の考えを書いていきます。

  • ショッピングモールというプラットホーム

 東さん曰く、ショッピングモールの言語はグローバルに共通であり、どこの国に行ってもどこに何の店があるか大体予想がつくそうです。ショッピングモールは世代間ギャップが存在するかつての街と違い、どの世代にも適応できる都市と言えます。ショッピング/パターンをテーマにした思想地図β1においてはこの話題に繋がる話がされています。

  • 歴史を引き継ぐ

 大山さんは都市型ショッピングモールを作る時に、その地形や歴史を大いに参照しているという話をされていました。詳細は事前に大山さんのブログにおいて綴られています。文脈を考えられて建築されたショッピングモールは商店街よりも正統性を持っているのです。
 また大山さんはジョン・ジャーディ氏*1から柘植喜治先生*2の流れの中に図らずもいるのですが、ジャーディーのモールの作り方は徹底的に都市を調べ、道を作ることでモールを浮かび上がらせます。昔からモールは都市とがっちり接続していたというのは非常に興味深いです。

  • 経験を提供する

 前述のジャーディーはシナリオも重視していたとの事です。まず都市、モールを作るには物語が必要であると。これはどんな建築にもプロダクトにも言える事だと思います。優れたモノには独自のコトが埋め込まれています。
 私は今までモールは画一的なモノを消費していた場だと考えていたのですが、それは間違った認識であり、最初から消費という経験を提供していた場であったのです。今の新しいモールはグランフロント大阪のナレッジキャピタルやイオンモール幕張新都心東映ヒーローランドの様に、さらに独自の経験、コトを提供する方向にシフトしています。

  • 場所性と経験

 私は独自の経験には、場所性が必要だと考えていました。そこでしか提供できない物語の為には場所という座標が必要であると。しかし現代のモールの内部では、都市は装飾の一つとしてビジュアルに分解され、座標を必要としなくても経験を提供するコンテンツとして作動しています。ショッピングモールの形態には場所性は立ち現れているものも、内部の物語には場所性は無いという乖離が起こっています。それはアメリカ西部のモールでは水が渇望され、噴水などの水景が発達したという、其処には無い物を求める人間の性の影響なのかもしれません。

 しかし私は、場所だけでも、人だけでも成立しない、両者が揃って初めて動く物語がきっとあると思います。そしていつか未来都市のプロトタイプであるショッピングモールにも、そんな物語が実装され、新しい経験を提供できる都市になる日が来ると、いささか理想的に考えています。

思想地図β vol.1

思想地図β vol.1

工場 (文庫ダ・ヴィンチ)

工場 (文庫ダ・ヴィンチ)

Jon Jerde in Japan: Designing the Spaces Between

Jon Jerde in Japan: Designing the Spaces Between

*1:建築家。キャナルシティなんばパークスなど多くのショッピングモールを手がける。

*2:千葉大学工学部都市環境システム学科教授。 tsuge laboratory