日常という波
震災が起こった後のディストピアの様な光景は、確かに非日常だった。社会的な視点を想像すると、津波によってこの国の脆弱性が露わになり、大きな変換点となったことと思われる。そう考えるが、何かが変わったという実感が持てなかった。私の中であの非日常性が日常という波に押し流され、すぐ其処に有る筈なのに知覚できないところに行ってしまったからだ。
チェルノブイリダークツーリズムから福島第一原発観光地計画まで連なる流れ。あの震災がなんだったのか、日常となった非日常に対してこれからどうすればいいのか、考え始めるには充分な材料だった。
ゲンロンカフェでの展示の最終日、そこで深く印象に残ったのは梅沢和木と藤城嘘の絵だった。どちら絵画もエネルギーに満ち溢れていた。写真だけでは感じることは難しかっただろう。欲望を下敷きにし、混沌の輝きの非日常が私達の隣にいる。
第二会場は油断していた。まさか麻雀をずっとやってるなんて思っていなかったし、普通の麻雀かと思ったら違う。よく見ると牌もオリジナル。やたら凝っている。
梅沢さんだけ顔を知っていたので、とりあえず場が巡るまで見ていた。後から知ったが、その時に麻雀をやっていたのは梅沢さん、嘘くん、パルコさん、速水さんだった。速水さん、最近写真付きのインタビューを読んだはずなのにわからなかった。嘘くんは誰か知り合いに似ていた。パルコさんはコミケ帰りとのことで椅子をお借りした。飾られた梅沢和木さんの絵の前で、ルールブックを見ながら麻雀を見ていると、なんとなく原発の危うさと脆さが浮き上がってきた。
チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1
- 作者: 東浩紀,津田大介,開沼博,速水健朗,井出明,新津保建秀,上田洋子,越野剛,服部倫卓,小嶋裕一,徳岡正肇,河尾基
- 出版社/メーカー: ゲンロン
- 発売日: 2013/07/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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