少しの毒
自炊を始めて10年ほどになる。
自分の好きなものを好きな味で食べられるぐらいには料理ができるようになった。
料理をしていると、最近は危険な考えが頭をよぎる。包丁を握っていると、これで指を切ったらどうなるだろうか、とか、火の中に手をかざすと痛いだろうか、などだ。
決して実行には移さないが、合理的に料理の手順を頭の中で組み立てながらも、そんな雑念でしかない思考が混ざってくるのが、少し楽しい。
料理ができあがって、あの人が僕の料理を食べる時、あの人は皿の中にそんな思考が混ざっている事など終ぞ考えてはいないだろう。そこがまた、たまらなく楽しいし、そんな一品を美味しいと言ってもらえるのはとても嬉しい。